不減衰系の運動方程式

振動
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構造物や機械の動的挙動を考える上で、もっとも基本となるのが「単振動モデル」です。

本記事では、減衰が無い理想状態(不減衰系)における運動方程式の導出を追いながら、物理量の意味や振動数との関係を理解していきます。

不減衰系の運動方程式

減衰を考慮しない(運動エネルギーと位置エネルギーが等価交換される理想状態)の運動方程式は、

$$\begin{eqnarray}
M &:& 質量\\
\ddot{x} &:& 加速度\\
K &:& 剛性\\
x &:& 変位
\end{eqnarray}
$$

としたとき
$$
M\ddot{x}+Kx=0
$$

となります。

単振動(調和振動、単調和振動)を考えると、変位をsin波で表す場合、角速度を\(\omega\)とすると

$$
x=X\sin{\omega t}
$$

\(x\)の1階微分は速度となるので、

$$
\dot{x}=\omega X\cos{\omega t}
$$

更に微分し加速度は、\(x=X\sin{\omega t}\)より

$$
\begin{eqnarray}
\ddot{x} &=& -\omega^2 X\sin{\omega t}\\
&=&-\omega^2x
\end{eqnarray}
$$

となります。

よって、単振動の運動方程式は

$$
\begin{eqnarray}
M\ddot{x}+Kx &=& 0\\
-\omega^2Mx+Kx &=& 0\\
(-\omega^2M+K)x &=& 0 \tag{1}
\end{eqnarray}
$$

となります。

固有方程式から角振動数を導出する視点

式(1)は固有方程式(characteristic equation) \(-\omega^2 M + K  = 0 \)もしくは\( x =0 \)の時に成立します。

そこで、

$$
-\omega^2 M + K  = 0
$$

に注目します。

この式を解くと、角振動数 $\omega$ が次のように求まります:

$$
\omega = \sqrt{\dfrac{K}{M}} \tag{2}
$$

 

このアプローチは、のちの多自由度系や連続体振動問題における固有値解析の基本となる考え方です。
単自由度系でも、この視点から式を導出することで、線形代数とのつながりや、モーダル解析への発展が理解しやすくなります。

角振動数 \( \omega \) の意味と単位について

導出した式(2)、 \( \omega = \sqrt{\dfrac{K}{M}} \) において、\( \omega \) は角振動数(angular frequency)と呼ばれる量です。

この \( \omega \) は「1秒間にどれだけ角度が変化するか(回転運動の速度)」を表す量で、単位は [rad/s](ラジアン毎秒)です。

 

例えば、ばね定数 \( K \) の単位は [N/m]、質量 \( M \) は [kg] なので、次のように変形すると:

\[
\omega = \sqrt{\dfrac{K}{M}} \Rightarrow \left[ \dfrac{N}{m \cdot kg} \right] = \left[ \dfrac{kg \cdot m/s^2}{m \cdot kg} \right] = \left[ \dfrac{1}{s^2} \right] \Rightarrow \omega = \left[ \dfrac{1}{s} \right] = \mathrm{[rad/s]}
\]

 

この角振動数 \( \omega \) を \(2\pi\) で割ることで、1秒間に何回振動するか(周波数 \( f \))が求められます:

\[
f = \dfrac{\omega}{2\pi}
\]

つまり、この式からシステムがどれくらい速く振動するかがわかります。機械・構造設計において、共振の回避や調整に重要な指標となる数値です。

 

今回導かれた角振動数 \( \omega = \sqrt{K/M} \) は、この系に固有の値であり、「固有角振動数(natural angular frequency)」と呼ばれます。

また、これを周波数(Hz)に変換したもの:

\[
f = \frac{\omega}{2\pi}
\]

は、「固有振動数(natural frequency)」と呼ばれます。

どちらも、その構造や物体が外力なしで自由振動するときに自然と選ばれる振動数を表しており、共振や動的設計で非常に重要な概念となります。

 

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